沖縄らしい缶デザインにもこだわり、1993年、ついに日本初の缶入りさんぴん茶が完成。しかし、「家で普段飲むさんぴん茶は人に売るものじゃない」「売れるわけがない」「さんぴん茶は温かくして飲むのが普通。冷やしたらダメだ」とスーパーやコンビニのバイヤー、マチヤーグヮの店主たちの反応は冷ややかで、沖縄のことをわかっていないと叱られたことも。取り扱いも思ったようには伸びていかない。しかし、社運を賭けて開発した商品。ここであきらめるわけにはいかなかった。なんとか頼み込んで商品を置いてもらうと、オジーやオバーたちにはじわじわと売れはじめたではないか。「もっと持ってきてちょうだい」と、追加で注文が入るようになった小売店もちらほら出はじめた。そこで水田は、少しでも認知が上がればと、やんばるの古民家で撮影した、テロップVといわれる静止画像のテレビ CMを打つことに。また、空港で客待ちをしているタクシー乗務員にはさんぴん茶を無償で配り、口コミの宣伝効果に期待した。
その後、さんぴん茶の市場調査をしてみると、購買層は確かに高齢者が多いが、もし若者にもっと売れればヒットも期待できるとわかった。ならばもっとインパクトのある宣伝をと、地元女子高生を起用し1997年にテレビCM を放映。沖縄のわらべ歌“じんじん”を替え歌にし、「チャッチャッチャチャチャ~♪」というユーモラスな歌詞とチャイナ服姿で独特の振り付けをするCMは効果てきめん。お茶の間で話題になり、認知度は急上昇。それに比例して売上も飛躍的に伸びた。CMの話にはまだ続きがある。モデルの女子高生を再び起用してCMの続編を制作することになったのだが、「社長、大変です!CMモデルがスイスに留学してしまいました~(汗)」「なに~!?ええい、時代は世界だ!スイスまで行ってCMを撮って来い!」―――結局、制作・撮影スタッフ一行はスイスへ飛び、イタリア、ギリシャへと移動しながらCM撮影を敢行。沖縄サミット開催年でもあったことから、インターナショナルなCMはたちまち話題となり、ポッカのさんぴん茶は売れに売れたのだった。