「沖縄独自のヒット商品を開発して、業績を大幅にアップさせなければ!」。社運をかけた切実な想いから、水田は精力的に缶飲料を開発していった。シークヮーサーや玄米、ゴーヤードリンク、黒糖コーヒー、ミキなど、今でこそ見かける商品だが、当時はちょっと変わった“県産モノ”として見られ、それなりに評価はされるものの、マニアック過ぎてなかなか売れなかった。その頃、沖縄で売れていたのはウーロン茶。「本土では売れなかったジャスミンウーロン茶を沖縄で売ったら、意外と売れた。こういったさっぱり系のお茶のニーズがあるのか、と発見でしたね」。
ヒット商品を模索する中、水田が尊敬するポッカコーポレーション創業者で、日本で初めて190g缶コーヒーを作り、HOT & COLD自販機を開発した谷田利景さん(前ポッカコーポレーション取締役会長)がプライベートで沖縄を訪れ、「沖縄では食堂でもどこでも、大きなやかんでさんぴん茶がよく飲まれている。みんなが飲みなれたものを商品化したらどうか」。とアドバイスをくれたこともあった。「確かに沖縄にはうっちん茶、グァバ茶、月桃茶などのお茶もあり、その中で家庭でも一番に飲まれているのはさんぴん茶だった」。天ぷらやチャンプルー、豚肉料理、脂っこい沖縄料理のお供に、さっぱりとした口当たりのお茶が欠かせない存在で、生活に溶け込んでいる。いけるかもしれないと思った。
広島出身の水田にはなじみがなく、飲むことも少ないお茶。「緑茶で育った我々には、さんぴん茶はクセや苦みを感じるが、それがおいしさの特徴でもあり、おもしろいと感じた。私がウチナーンチュだったら逆に商品化はしなかったかもしれない」。
当時の本社の反応もおもしろい。沖縄ポッカが売上を伸ばすためなら、可能性のある新製品はチャレンジしろとイケイケドンドンの時代。「『さんぴん茶を出します』と報告したら、中身は何が三つ入っているんだ?」と質問が。「さんぴん茶」を「三品茶」と勘違いしていたという笑えるエピソードだ。当時、本土ではウーロン茶以外の中国茶の知名度が低く、ジャスミン茶である「香片茶(シャンピエンチャ)」がほとんど知られていなかったことが、この問答からもよくわかる。