ほんのりとした優しい甘み、そして香ばしい風味。
ミネラルがおいしく補給でき(※1)、さらにノンカフェインで子供や赤ちゃんにも優しい…と、まさに非の打ちどころが無いと言っても大げさではない、コーン茶。
しかし、その人気に火が付いたのはここ数年。その素材や製法について、まだまだ知らない人も多いことと思います。
今回、国内ではほぼ初めて、その生産や製造の詳細に迫る機会に恵まれました。
コーン茶の原料となる「デントコーン」
今回訪れたのは北海道のとある農場。ここで栽培されているのは、コーン茶の原料となる「デントコーン」。小高い場所から見渡せるその農場には見渡す限り、所狭しとコーンが育てられています。そのスケールは圧巻です。
今回訪れたのは北海道のとある農場。
ここで栽培されているのは、コーン茶の原料となる「デントコーン」。
小高い場所から見渡せるその農場には見渡す限り、所狭しとコーンが育てられています。
そのスケールは圧巻です。
さて、あまり聞き慣れないデントコーン。
普段私達が口にしている、いわゆるスイートコーンと、どこが違うのでしょうか?
早速、農場の方に聞いてみると
「そもそも品種自体が全く異なるものです。収穫時期も、見た目も違うのです。見て下さい。」
と、デントコーンを手にその違いを解説してくださいました。
早速、農場の方に聞いてみると
「そもそも品種自体が全く異なるものです。収穫時期も、見た目も違うのです。見て下さい。」
と、デントコーンを手にその違いを解説してくださいました。
すると、その違いは一目瞭然。収穫期を迎えたデントコーンの実は側面が固く、冠部がくぼんだ(デント)形状になっています。
すると、その違いは一目瞭然。収穫期を迎えたデントコーンの実は側面が固く、冠部がくぼんだ(デント)形状になっています。
この見た目が馬の臼歯のようであることから、和名「馬歯種コーン」とも呼ばれるとのこと。
そのネーミングから、雄大な自然とともに築かれてきた北海道の文化を感じる。
そんな気持ちを抱かずにはいられません。
この見た目が馬の臼歯のようであることから、和名「馬歯種コーン」とも呼ばれるとのこと。
そのネーミングから、雄大な自然とともに築かれてきた北海道の文化を感じる。
そんな気持ちを抱かずにはいられません。
デントコーン国内生産への熱い想い
このデントコーン、世界ではその用途の多様性からコーンの中で最も多く栽培されている品種だそうです。日本でも、さぞかし沢山の量を栽培しているのだろうと思うところですが…。
「実は日本で栽培を開始したのは、ここ10年くらいの話なんです。」
意外なことに日本はコーン(子実)の輸入量が世界第一位。 (※2)
そう、実際は殆ど全てを輸入に頼っていたのです。
このデントコーン、世界ではその用途の多様性からコーンの中で最も多く栽培されている品種だそうです。日本でも、さぞかし沢山の量を栽培しているのだろうと思うところですが…。
「実は日本で栽培を開始したのは、ここ10年くらいの話なんです。」
意外なことに日本はコーン(子実)の輸入量が世界第一位。 (※2)
そう、実際は殆ど全てを輸入に頼っていたのです。
そのような背景があり、この農場ではデントコーンの国内自給率の向上、そして安心安全な国産素材を提供したいという目的で、2011年よりデントコーン栽培を始められたのだそうです。
そのような背景があり、この農場ではデントコーンの国内自給率の向上、そして安心安全な国産素材を提供したいという目的で、2011年よりデントコーン栽培を始められたのだそうです。
そしてデントコーンを栽培することで、異なる作物を順番に育て土壌のバランスを整える「輪作」が、より効率的に行うことができるというメリットもあるのだそうです。
この「輪作」は、日本の畑ではごく一般的に行われている農法らしいのですが…(恥ずかしながら私は初めて知りました)
麦、大豆に、コーンを加えた3種類の輪作を行うことで、土壌の養分の偏りがベストな周期で調整され、作物全体の品質・生産性の向上に大変効果があるとのこと。
品質の高い安心安全なデントコーンを安定した量で生産するための、計算され尽くした栽培。その緻密さに感服です。
ところで、なぜコーン茶にはデントコーンが原料として使用されるのでしょうか。
その理由のひとつは、コーンに含まれる糖分量にあります。
他の品種より収穫時期が遅いデントコーンは、火を入れた際に焦げ付きの原因となってしまう糖分が程よくでん粉に変化します。そのため、焙煎が行いやすいとのこと。
また側面にしっかりとした厚みがあるため、じっくりと熱を入れることができ、香ばしい香りと風味を引き出しやすいのだそうです。
「デントコーンの国内自給率をもっと上げて、これからも多くの方においしいコーン茶を味わってもらいたいと思っています。」
その言葉には、国内デントコーン生産のパイオニアとしての、力強い決意がみなぎっていました。
広大な土地、豊かな自然、そして何より国産素材へのこだわり。おいしいコーン茶が生まれるストーリーは、素材を育てるだけではなく、その素材と真摯に向き合い、選び抜くところから既に始まっているのです。
※2【出典】『FAO:Import Quantity of Maize 2019』より
水辺に往年の面影が残る、
歴史ある焙煎所
焙煎所は、濃尾平野から伊勢湾へと流れる清流のほとりに位置していました。
春には両岸から舞い散る桜の花びらを湛える、見事な川面の景観が拝めるという贅沢この上ない立地です。
ご案内いただいた工場の職員の方から、
「創業当時は、水車を回して手作業で精米・精麦を行っていました。」
と言うお話がありました。
焙煎所は、濃尾平野から伊勢湾へと流れる清流のほとりに位置していました。
春には両岸から舞い散る桜の花びらを湛える、見事な川面の景観が拝めるという贅沢この上ない立地です。
ご案内いただいた工場の職員の方から、
「創業当時は、水車を回して手作業で精米・精麦を行っていました。」
と言うお話がありました。
穏やかな川の流れが、かつてはこの土地に暮らす人々の生活の中心だったのでしょう。
多くの人で賑わう、かつての川辺の情景が浮かんでくるようです。
そんな豊かな歴史背景を持つ焙煎所ですが、中に一歩足を踏み入れると清潔感にあふれる機器が整然と並ぶ、洗練された空間が拡がります。
そして早くも、香ばしくどこか懐かしい焙煎の香りが、冷えた冬の空気に漂い鼻腔を刺激します。
職人の方々はこの香りや温度の変化を敏感に感じ取り、日々の焙煎を行っています。
テクノロジーと人の技術の調和、自然との共生。
そんな絶妙なバランスがつくりあげる情景に、早くも胸が満たされる、なんとも不思議で気持ちの良い場所です。
素材に再び命を灯す焙煎の技
焙煎前のコーンは、きれいな黄金色。焙煎用に乾燥されたコーンは、より鮮やかな色にも見えます。
しかし、1時間弱をかけて焙煎していくうちに、その姿は驚きの変貌を遂げるのです。
1度に焙煎窯に入るコーンの量は100キログラム。この工場では、1日に多いときで1トンものコーンを焙煎するのだそうです。
そのコーンの黄金色が、焙煎機の中でだんだんきつね色に色づいていく姿は圧巻。
なにか一旦収獲されたはずの原料が窯に入ることで新たな命を吹き込まれ、再び育っていくかのような錯覚を覚えます。
焙煎前のコーンは、きれいな黄金色。焙煎用に乾燥されたコーンは、より鮮やかな色にも見えます。
しかし、1時間弱をかけて焙煎していくうちに、その姿は驚きの変貌を遂げるのです。
1度に焙煎窯に入るコーンの量は100キログラム。この工場では、1日に多いときで1トンものコーンを焙煎するのだそうです。
そのコーンの黄金色が、焙煎機の中でだんだんきつね色に色づいていく姿は圧巻。
なにか一旦収獲されたはずの原料が窯に入ることで新たな命を吹き込まれ、再び育っていくかのような錯覚を覚えます。
職人さんは、窯の小窓から焙煎具合を逐一チェック。 もちろん機械 で徹底した管理を行いますが、その日の気温や湿度・回転数・コーンの状態などから、最終的には職人さんが経験と勘を頼りに焙煎をコントロールします。
「その日の気温や湿度によって、微妙に火力や焙煎時間を変えていますね。」
取材の日は前日までの冷え込みから一転、小春日和の穏やかな一日。その温度差を的確に感じ取り、火力の切り替え時間を絶妙に設定することが必要だったようです。
焙煎の仕上がり具合を確かめる職人さんの眼差しには、確かな自信が宿っていました。
大量の素材を加工するため、機械の力は必要。しかし最終的にそこに命を吹き込み仕上げるのは、まぎれもなく「人」。
この土地で長い年月をかけ培ってきた技術に対するプライドが、確かにそこにはありました。
取材の日は前日までの冷え込みから一転、小春日和の穏やかな一日。その温度差を的確に感じ取り、火力の切り替え時間を絶妙に設定することが必要だったようです。
焙煎の仕上がり具合を確かめる職人さんの眼差しには、確かな自信が宿っていました。
大量の素材を加工するため、機械の力は必要。しかし最終的にそこに命を吹き込み仕上げるのは、まぎれもなく「人」。
この土地で長い年月をかけ培ってきた技術に対するプライドが、確かにそこにはありました。
黒くきらめくコーンの果粒
焙煎が済んだコーンは、コンベアで運ばれ冷却されます。
その粒はひとつひとつが黒く艷やかに輝き、1時間前の姿からは想像がつかない美しい色姿に変わっていました。
その変貌ぶりはもちろん、粒のひとつひとつに、こんなに緻密な愛情をかけて接していたことにも驚きです。
北海道で生まれたデントコーンは、こうして人の手から人の手を渡り、ほのかに甘く香ばしいコーン茶となって私たちの喉を潤してくれます。
そこには素材と向き合い、自然と向き合い、歴史や伝統とも向き合い続ける「人」の想いをひしひしと感じました。
普段の暮らしでは触れる機会の少ない生産者、製造者の方々の熱いこだわり。しかし、この想いがコーン茶にちゃんと詰まっているからこそ、これだけ多くの人に愛されるお茶になれたのかもしれません。