国民的飲料と言っても過言ではない麦茶。おいしい上に美容にもいいと言われているため、私も毎日飲んでいます。
ですが、なぜここまで多くの人に愛されるのか。その理由についてはあまり知られていないように思います。
気になりだしたらとことん調べたい私。
その理由は麦づくりにあると睨み、さっそく取材の手配をし農家さんのもとへ。
日本有数の麦の産地である宮城県で、麦茶の原料である六条大麦の栽培を体験してきました。
麦畑には驚きがいっぱい!
農家の方とは畑で待ち合わせです。手を振りながら迎えてくれる農家さん。
その後ろには、果てが見えないほど広大な畑に、所狭しと麦の芽が顔を出しています。どんな体験ができるのか、期待に胸を膨らませる私。
早速お借りした作業着に着替え、まず何をやるのか伺ってみると、農家の方がひと言、「ではまず、芽を踏んでください」。
えっ!?
何でも「麦踏み」と言って、麦の芽が徐々に伸び始める冬の時期に、その芽を踏むことで麦の強い成長を促すための、麦づくりには欠かせない基本工程なのだとか。さっそく知らなかった世界に一歩足を踏み入れた感じです。踏み入れたからには、知らなかったことを全部知りたくなるのが人の性。私はずっと気になっていた、チラチラと視界に入る、ある「珍客」についても尋ねてみました。そのある珍客とは・・・白鳥。(なぜ湖ではなく、畑に!? )
するとまたもや意外なことを教えていただけました。
意外と多い、麦の天敵
意外と多い、麦の天敵
ここ東北には、冬のこの時期、遠い北国から白鳥や雁(がん)といった渡り鳥が越冬のために多く訪れるそうです。
その渡り鳥たちが冬を乗り越える栄養源とするのが、麦の芽。
面白いことに、何でも白鳥と雁では芽の食べ方に違いがあるそうです。
白鳥は芽の先の方をチョイチョイとついばんで食べるらしいのですが、雁は芽の根本から思いっきりくわえていくそう。
とても食いしん坊なのです。
そんな食欲旺盛な渡り鳥たちから麦を守るため、この農家さんでは寒さの中、毎日畑を見回っていらっしゃるのだとか。
それ以外にも、例えば収穫期となる6月には、
湿気が大の苦手な麦のために、梅雨空と育成の塩梅をにらめっこしながら麦刈りを行っているとのこと。
予想以上に敵が多い麦。その麦を育てる農家さんの苦労、そして愛情はそれ以上に多いことに気付かされる体験となりました。
愛とこだわりのバトンは
製造者のもとへ
愛とこだわりのバトンは
製造者のもとへ
さて私は、農家の方々が愛情たっぷりに育てた六条大麦を追いかけ、 山梨県内にある麦茶の製造工場へやって参りました。
取材をさせていただいたのは焙煎所。 工場での焙煎の様子なんて滅多に見られません。 衛生服を着て殺菌と消毒を済ませ、緊張しながら建物の中へ入ります。
すると・・・出迎えてくれたのはあの香り。
そう麦茶です。焙煎される麦は、何とも落ち着く香りで、 私の心は一気にほぐれてしまいました。
おいしい麦茶に欠かせない職人の腕
この焙煎所では「熱風焙煎」という方法で焙煎が行われるそうです。
この方法によりしっかりと麦に熱が入ることで、麦茶の甘みがグンッと引き出されるのです。その過程では、都度プロが厳しい目で見て焙煎度合いをチェック。
焙煎によってコーヒー同様に味や香りが変わってしまう麦茶には、温度や時間を巧みに調整していく職人たちの腕が欠かせないとのこと。
素人の目からは違いがまったくわかりませんでした。
また、ここではプロの目だけでなく、焙煎の度合いを測定し数値としてもチェックを行っていました。数値により焙煎の温度を細かく調整することで、品質を一定に保っているのだそうです。
味を決める上で、素材と同じくらい大切な焙煎の技術。
この技術と厳しさがあるから、おいしい麦は、ちゃんと、おいしい麦茶に生まれ変われるのですね。
今回のホンモノ体験を通して、一杯の麦茶を届けるために注ぎ込まれる生産者、製造者の方々の想いに触れることができました。当たり前のように多くの人に飲まれている麦茶。そこには、私が知らなかった、当たり前という特別な地位を維持し続けられるだけの「こだわり」と「愛」がたくさん詰まっていました。