
花のような香りやフルーティーな香りで優しく心をほぐしてくれる烏龍茶。烏龍茶と言えば、思い浮かべる産地はやっぱり中国ですよね。
しかし今回はそんな烏龍茶を、何と“すべて日本でつくっている”という方々のもとへ伺う機会に恵まれました。
しかも、この烏龍茶は日本の複数の産地の茶葉をブレンドしてつくっているとのこと。
今回はその中でも、お茶の産地としては“ちょっと意外な”土地へ取材に行って参りました。
(ちなみに、緑茶と烏龍茶は同じ茶葉からつくられているんですよ。)
にっぽんが誇る大自然の恩恵を受けた茶畑

今回の取材でまず伺ったのは、2023年に“世界自然遺産登録30周年”を迎える屋久島。有名なアニメ映画のモデルにもなったと言われるほど太古の自然が息づくこの島で、まさか茶葉がつくられているというのは驚きです。
空港から島の輪郭を描くように、海岸沿いの道を車で走ること約30分。正面には海、背面には雄大な山々を望む絶景に農家さんの茶畑はあります。
一体、大自然と人が共生するこの屋久島ではどんな茶葉が育つのか、さっそく農家さんに伺ってみました。
「屋久島のお茶の特徴は、何と言っても旨味だと私は思っています。この島は亜熱帯に位置しているので、平地での平均気温は約20度と温暖です。“茶”はもともと亜熱帯地域が原産地と言われている植物。なので屋久島は、“茶”が本来持っている旨味を引き出しやすい土地なんです。」
私たちが取材に訪れたこの日は雲ひとつない快晴。春が始まったばかりなのに、初夏を思わせるような太陽が燦々と照りつけています。また、この茶畑には、他の地域で見られる霜対策用の“防霜ファン”も見られません。
これだけ茶葉の栽培に魅力的な環境が広がっているとは、屋久島産の茶葉への興味がますます湧いてきます。
屋久島の茶葉を育てる、母なる雨?
「ただ、屋久島は別名“雨の島”とも呼ばれる土地でもあります。なので、他の地域とは違って、雨の日にも茶摘みをするんです。」
屋久島の年間平均降水量は平地でも約4,500mmにもなると言います。何とこれは、日本の年間平均降水量の2倍を遥かに超える量です。
「一般的に水分がついた茶葉は、加工をしていく上で品質が低下すると言われています。なので屋久島では、専用の“脱水機”を使って摘んだ茶葉の水分を取り除いています。そうすることで品質が低下するのを防いでいるんです。手間ではありますが、雨を避けていたらこの島でお茶づくりはできません。」
従来のやり方にとらわれるのではなく、屋久島の特徴を受け入れたお茶づくりにその方法を進化させる。農家さんのお話は、自然との共生を楽しむ、“屋久島愛”に溢れています。
悠久の大地がつくり出す、美しい水
「雨は、山や森や川を伝って茶葉を育てる水になってくれます。しかもその水は、けがれていません。なぜなら、屋久島の大自然によりほとんど人為的な影響や汚染を受けないからです。こんな美しい水で茶葉を育てられるところ、他にはないと思っています。」
太陽と雨。何千年もの時を超えて豊かに息づく大自然。そして、この特別な土地にこだわり、この土地に寄り添ったお茶づくりを追求する人々と、それに応えようと逞しく育つ茶葉。
すべての“恵み”と“命”が強く、深く繋がり合うことで、ここでしか育めないおいしさが生み出されていく。そんな、自然と人との循環の産物こそが屋久島の茶葉だったのです。
農家さんが教えてくださった通り、いただいたお茶からは爽やかな旨味を感じます。それはまるでこの島と、つくり手の方々の人柄がそのまま宿ったような優しく奥深い味わい。
この茶葉がどのような味と香りの烏龍茶に生まれ変わっていくのか、胸は高鳴る一方です。
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