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ホンモノ体験
北海道夕張メロンソーダ

60年以上の歴史を誇る夕張メロン!
その品質を守り続ける人たちの固い絆とは

日本有数の高級メロンブランド「夕張メロン」。
芳香豊かで、とろけるような瑞々しい朱色の果肉。そして、口の中に広がる豊かな甘さは 多くの人を虜にしてやみません。
そんな夕張メロン、その歴史は思いのほか長く、実に60年以上にもなります。

今回は幸運にも、この記念すべきタイミングに農家の方へ夕張メロンにかける“愛とこだわり”を伺う機会に恵まれました。

おいしい夕張メロンを育てるコツとは?

まだ上着が手放せない春の北海道を感じながら訪れたのは、ご両親の代から二代にわたって夕張メロンを育てている農家さんの畑。三方に夕張山系を臨む土地の一角に、大小60棟ほどのビニールハウスが並んでいます。

こちらの農家さんでは、種から苗まで育った夕張メロンをビニールハウスに移し収穫まで育てているとのことです。
夕張メロンは、「香り」「果肉の甘さ」に加え、「舌触り」が一体となることで初めて品種本来のおいしさが完成すると言われるほど、栽培が難しい作物です。

早速、その栽培方法について伺ってみると、
「夕張メロンはほぼ機械を使わずにつくっています。楽な栽培方法を試したこともありますが、それだと果肉が硬くなったり、香りが少なくなったり、とても夕張メロンと呼べる品質にはなりませんでした。」と、そのご苦労を教えてくださいました。

夕張メロンの栽培でもっとも大切になるのが、温度と湿度の管理だそうです。そして、この管理にこそ、農家さんが長い歳月で培った職人としての経験と、繊細さが必要になってくるのです。

例えば苗の段階では、温水設備を使ったり、上に何重にもビニールをかけ、苗が育つ適切な温度と湿度を保てるよう施します。朝が来ればそのビニールをはがし苗が日光に当たるようにする。夜になれば、またビニールをかけ、寒さから苗を守る。
これを毎日手作業で行っているそうです。

そして、ここで農家さんの経験と繊細さがものを言います。

「このビニールは、タイミングをほんの一時間見誤っただけでも夕張メロンの出来が変わってしまいます。なので、常に天候とにらめっこしながら、日毎に温度と湿度が保てるベストなタイミングでビニールの掛け外しをしています。」
このように、栽培期間中は常に神経を研ぎ澄ませておかなければなりません。農家さんの仕事の繊細さと、夕張メロンの品質にこだわる強い愛を感じます。

夕張メロンの本当の食べ頃は、たったの○日間!

また夕張メロンは、完熟の期間がとても短いという特徴を持っています。
その期間は、なんと3日〜4日。
他のメロンでは収穫から1週間ほどで食べ頃を迎えるものもあるなかで、この短さには驚きです。それだけ熟度が早いと言えます。

出荷の流れは、早朝に収穫作業を終え、その日の内に夕張メロンブランドとしての品質検査を受け、翌日から翌々日にはもうお客さんの前に並んでいなくてはなりません。
さらに、収穫の時期を1日でも見誤ってしまうと夕張メロンの厳しい品質検査から落とされてしまうこともあるため、収穫のタイミングを完璧に見極める目も求められます。
農家さんの心技体、すべてが揃わなければ夕張メロンブランドとして胸を張れる品質のものは完成しないのです。

しかし、どうしてここまで徹底して品質管理を行うのか。
その背景にはブランドを支えてきた先人を想うが故の、こだわりの理由がありました。

北国の寒さから夕張メロンを守った愛

ここ夕張市は山間地に位置するため、北海道特有の大規模農業が行えません。さらに、火山灰質の土地が影響し育てられる作物が限られるという、農業を行う上では非常に苦労の多い土地だそうです。先人の方々は、夕張の農業の未来を案じ、様々な試行錯誤をする日々を過ごします。
昭和32年。夕張市の農業改良普及員が偶然「スパイシーカンタロープ」という品種のメロンに出会います。このメロン、味はお世辞にも褒められるものではなかったそうですが、夕張の農業の未来に可能性を見出せるほどの、ある特徴を持っていたそうです。

それは、夕張メロンの代名詞である、「香り」。
この運命とも言える出会いがなければ夕張メロンは生まれていなかったと思うと、何だか奇跡の産物という気がしてきます。

その後、新品種のメロン開発に向け有志の方々が集結します。皆でお金を出し合い、交配に使う原種の種を求め日本中の産地を駆け回わり、苦難の末になんとか甘さが特徴の高級メロン「アールスフェボリット」というメロンの原種を手に入れます。これでようやく、新品種のメロンの栽培がスタートしました。

ですが、ここでまたひとつの課題が。当時はビニールハウス栽培など行われていません。4月でも氷点下を記録する夕張の寒さから新品種のメロンをどうやって守ってきたのでしょうか。

先人の方々は寒さから種を守るために、なんと腹巻きに種を入れて、自らの体温で温めたそうです。そして、当時では珍しかったメロン栽培専用のハウスを建て、ときにはメロンの隣で寝泊まりまでしながら成長を見守り続けてきました。
夕張メロンの誕生を支えたのは、先人の方々の我が子を想う親さながらの愛情だったのです。

未来へ受け継がれていく、夕張メロンへの想い

そんな苦労が実ったのが、今から60年前の昭和36年8月。
ついに新品種、夕張メロンの本格生産がスタートしました。
現在では「赤いダイヤ」とも呼ばれる夕張メロン。その原石を丁寧に丁寧に磨き上げた人たちがいらっしゃったからこそ、今私たちは、そのおいしい輝きの恩恵を受けることができていると感じました。

こちらの農家さんを始め、夕張メロンを育てているすべての人が先人の方々を尊敬しています。そして、ブランドとして築き上げてきた夕張メロンを“作らせてもらっている” ということに誇りを持って栽培を行っているそうです。

だからこそ、どんなに大変だろうが機械ではなく手作業にこだわり抜いて夕張メロンを育てているのです。

夕張メロンが愛される理由。それは、作り手たちの労を惜しまない繊細な仕事と、おいしさと品質を追求し続けていくという、夕張ブランドを守る強い覚悟があるから。
夕張メロンには、この土地を想う人々の愛が脈々と流れ込んでいました。