乳酸菌の産生する菌体外多糖(EPS)の免疫活性が
発酵する素材の種類によって変わり得ることを確認
ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社(代表取締役社長:征矢真一、本社:愛知県名古屋市)は、東北大学と共同で、乳酸菌の産生する菌体外多糖(EPS)の免疫活性が、発酵する素材の種類によって変わり得ることを確認しました。
研究背景と目的
近年、健康志向の高まりや環境への配慮、また乳の代替え品として植物性ヨーグルト市場は伸長している一方で、市場を形成してから日も浅く、乳のヨーグルトに比べて植物性発酵乳に関しては知見が少ない状況です。
ヨーグルトには菌体外多糖という、とろっとした食感を作る成分が含まれており、これが免疫活性の持ち主の一つです。乳酸菌の産生するEPSは免疫活性を有しており、ヨーグルトではヒト試験で風邪症候群の罹患リスクを低減させることが報告されています(※1)。
菌体外多糖は乳に含まれる糖からつくられること、乳等の発酵する素材の種類によって含まれる糖の種類が異なることから、素材の種類によって乳酸菌の産生するEPSの免疫活性が変化する可能性が考えられました。
そこで今回、培養細胞を用いて、豆乳と牛乳からつくった菌体外多糖の免疫活性を比較しました。
研究方法と結果
豆乳および牛乳からタンパクを除いてホエー溶液を調製し、Streptococcus theromophilus SBC8781株で発酵させ、培養上清からEPSを調製しました。それぞれのEPSの免疫活性について、感染した細胞やがん細胞を攻撃するNK活性(※2)と細菌の感染時の過剰な炎症(熱や痛み、発赤など)を抑制する抗炎症活性(※3)について細胞実験により評価を行いました。
NK活性実験:
マウスマクロファージ様細胞(RAW264.7)を用いて、それぞれのEPSによるIL-12(インターロイキン12:NK細胞を活性化する因子)のタンパク量をELISA法により評価しました。
抗炎症活性実験:
ブタ腸管上皮細胞(PIE)を用いて、LPS(リポポリサッカライド:大腸菌やサルモネラ菌などの細菌の細胞壁の構成成分の一つ)で炎症を誘導し、炎症の強さを、指標である炎症性サイトカイン(IL-8やMCP-1)の遺伝子の発現量で評価しました。
その結果、豆乳から調製したEPSの方が、NK活性が高い可能性があることがわかりました(図1)。
また、抗炎症活性についても、豆乳から調製したEPSの方が、抗炎症活性が高い可能性があることがわかりました(図2)。
これらの結果により、植物性ヨーグルト由来の成分が、従来のヨーグルト由来の成分以上の免疫活性を得られる可能性があることが示されました。
今後、ヒトへの効果を検証するなど、より研究を進め深め、お客様に植物性ヨーグルトの持つ価値や魅力をお伝えしていきます。
- 1 出典:British Journal of Nutrition (2010), 104, 998–1006
- 2 1NK活性:NK(ナチュラルキラー)細胞が、感染した細胞やがん細胞を攻撃する活性。
- 3 抗炎症活性:細菌の感染時の過剰な炎症(熱や痛み、発赤など)を抑制する活性。
図1 各EPSのNK活性
図2 各EPSの抗炎症活性
(補足:図2)
BL:何もしていない状態
NC:原因となる物質を入れ、炎症を起こした状態
学会発表の概要
- 演題:植物性発酵乳における菌体外多糖の免疫活性
- 発表者:ポッカサッポロフード&ビバレッジ(株)、東北大学大学院農学研究科
仲田創、友清帝、北原秀悟、平光正典、井上孝司、北澤春樹 - 発表日:日本農芸化学会2021年度大会(2021年3月18日~21日)