第23回
夏の終わりはクスクスフェスタで盛り上がる!
まだまだ暑い夏が続く9月のシチリア。
そんな9月のシチリアを更に熱くするのがトラーパニから北50kmの街、サン ビート ロ カーポで行われるクスクスフェスタ!
トラーパニと言えばクスクス粉から作る手打ちのクスクスが有名な事は、以前にもこのコラムで触れましたが ( 第4回コラム )、そのクスクスは北アフリカから伝わって来たもの。
このクスクスフェスタには、世界中のクスクス料理が集まります。
トラーパニ風クスクスと言えば「魚のクスクス」が定番なのですが、このクスクスフェスタでは色々な国のクスクスを食べる事ができてとっても楽しい!
今年で21回目を迎えるこのクスクスの祭典は、地元の人のみならず、遠方から大型バスでツアーを組んでくる人もたくさんいるほど。
今回はその熱気ムンムンなフェスタの様子をお伝えします!
トラーパニ地方には何故手打ちクスクスが根付いたの?
皆さん、クスクスというと、箱に入っていて熱湯やスープをかけてフタをして…というものを想像しませんか?
トラーパニを中心に、シチリア西海岸の海沿いの街では「セモラ」と呼ばれる硬質小麦の挽き割り粉に水を少しずつ加え、手打ちのクスクスを作ります。
シチリア中、どこを探しても、トラーパニのような手打ちクスクスを作っている地方が見当たらないのは、これは北アフリカから伝わった調理法だからと言われています。
トラーパニとチュニジアは一番近いところで200kmほど。
トラーパニの漁師たちはチュニジア沖まで漁に出る事が多く、そのためチュニジア人との交流がありました。
漁師たちはチュニジア人からクスクスの作り方を聞き、売れ残った小さな魚を使って魚のスープを作りクスクスを作ってみた、それが現在のトラーパニ風クスクスの始まりと言われています。
トラーパニ風クスクスは1時間半かけて蒸しあげた手打ちクスクスに魚のスープを染み込ませて休ませること1時間。
しっとりとした食感のこのクスクスはアフリカ風のクスクスとは全く別の味わい。
北アフリカから伝わって来た文化が少しアレンジ、トラーパニ独自の食文化として根付いていったのです。
世界各国で食べられるクスクス
クスクスが食べられている地域と言えばまず浮かぶのがモロッコ。
クスクスはモロッコやチュニジアなど、北アフリカで生まれました。
そしてそこから、中東、フランス、イタリア、そして南米はブラジルまで伝わったと言われています。
クスクスフェスタでは、毎年トラーパニ地方に伝わる数種類のクスクスの他、チュニジア、モロッコはもちろんのこと、セネガル、コートジボワール、ブラジルなど、世界のクスクスを食べられるのが魅力!
私が毎年食べるお気に入りはブラジルのクスクス。
クスクスフェスタに来るまでブラジルでもクスクスが食べられていることを知らなかった私。
そしてブラジルのクスクスは毎年「ココナッツミルクと海の幸のクスクス」。
最初は、ココナッツミルクに海の幸!?と驚いた私ですが、どんな風味なんだろう…と好奇心がムクムクと湧いてきて。
食べてみたらこれが驚くほど美味しい!
5年前に初めて食べてから、毎年食べ続けています。
他にはどんなクスクスがあるかというと、多い組み合わせは「肉+野菜」。
例えば、コートジボワールの「牛肉と羊肉+ズッキーニ・カボチャ・ジャガイモ等」、チュニジアは「羊肉+カボチャ」、モロッコは「牛肉+ジャガイモ・ニンジン等」。
ちょっと変わったところではセネガルの「牛肉と羊肉+ナツメヤシの実+玉ねぎ・にんじん・ズッキーニ等」。
同じ肉と野菜のクスクスでも、国によって加わるスパイスが異なり、全く違う風味に仕上がるのも興味深いところ。
そして、お気付きかもしれませんが豚肉を使う国がないのは、クスクスを食べる国にはイスラム教徒が多いから。
一方、カトリック教徒が90%をしめるトラーパニには豚肉を使ったクスクスがあるのも面白く。
食文化は風土気候、そして宗教と密接に関わって発達していくのだな、と実感できます。
クスクスフェスタでは10ユーロのチケットでお好きなクスクス1皿、フルーツかドルチェ、そしてグラスワインがセットに。
チケットを買ったら地図をもらって食べたいクスクスを目指します!
各国の民族衣装を楽しもう!
クスクスフェスタでのもう一つの楽しみが、各国の民族衣装!
開催中はクスクスを食べる事ができるスタンドが立ち並ぶサン ビート ロ カーポの街ですが、あちらこちらでアフリカから参加してきた方の民族衣装を見る事ができます。
そしてエキゾチックな美女達がクスクスを盛ってくれるのも嬉しい。
街の中のあらゆるところで、手打ちクスクスを作っている風景を見る事もできます。
街には露店がでてお祭り気分!
期間中、お祭りムードのサン ビート ロ カーポ。
メインストリートにはシチリアを中心とした特産物の生産者のスタンドも立ち並びます。
サラミやチーズ、アーモンド、ピスタチオ、マグロ製品、陶器、伝統工芸など、それに最近はイタリアで大流行中のクラフトビールを生で飲ませてくれるスタンドも多く、クスクスを楽しむのはもちろん、シチリア全土の食文化が楽しめるのもクスクスフェスタの楽しいところ。
暑い暑いシチリアの夏を吹き飛ばす勢いで盛り上がります。
1年に1回のクスクスの祭典。
開催期間は2週間と長いので、私も毎年必ず時間を見つけて行っています。
毎年9月中旬から下旬にかけての開催ですので、この時期に合わせてシチリアに来るのも楽しいかも!
レシピ
今月の料理はクスクスフェスタにちなんで「ひよこ豆と鶏肉のクスクスサラダ」をご紹介します。これはクスクス大好き!なトラーパニの友人から教えてもらったレシピ。モロッコ人から教わったレシピをシチリア風にレモンを使ったレシピにアレンジ。一つ一つの材料に下味をつけるのが美味しくなるポイント!レモンの酸味と爽やかなミントが心地よく、残暑の厳しい9月にもさっぱりと召し上がっていただけるレシピです。手作りクスクスは日本では材料の入手が困難なので、箱に入った市販されているクスクスで代用しています。
レシピはこちらラ ターボラ シチリアーナ主宰。シチリア島トラーパニ在住。シチリア料理・菓子 スペシャリスト。イタリア料理・菓子の知識を生かし、大手企業で洋菓子の商品開発、カフェの店舗企画に従事。2004年、シチリア(イタリア)食文化を学ぶため、イタリアに渡り、現地にてシチリア郷土菓子や家庭料理を研究しながら、食に関するコーディネートや通訳などで活躍しています。
「ポッカレモン有機 シチリア産ストレート果汁」を使ったレシピを監修していただいています。