第18回
4月は春野菜を楽しもう!
3月の最後の日曜日からサマータイムになるイタリア。
1時間時計が前に戻るのでその分、夕陽が沈むのも1時間遅くなり、いよいよ春の訪れを感じさせてくれる4月の初旬。
この時期になると楽しみなのが、旬の季節が短い春野菜。
私も市場でたくさんの春野菜を買い込み、料理をするのが楽しみな季節です。
グリーンピース・ソラマメ・アスパラガス…4月は春野菜が旬です!
シチリアの市場は旬の食材がズラリと並びます。
それでも私がシチリアに来た13年前と比べると、夏野菜も冬野菜も旬の時期が長くなってきました。
そんな中、本当に旬が短いのが春野菜。
4月はそんな春野菜の旬真っ盛り!
シチリアの春野菜の主役はグリーンピース、ソラマメ、そしてアスパラガス。
私がシチリアにやって来た初めての年、知り合いの農家さんの畑で収穫したてのグリーンピースを食べさせてもらいました。
そのグリーンピースは衝撃的に甘く、目をつぶって食べたらスイートコーン?と思ってしまうほどの甘さでした。
グリーンピースの隣に植わっていた「ソラマメも生で食べてごらん。」と勧められたのですが、
何せソラマメは苦手だった私。
「あのちょっと蒸れたような独特の匂いが、あんまり好きじゃないの」と、一度は断ったものの、農家さんに「大丈夫だから」と、しつこく勧められ恐る恐る口に運んでみると…。あれ?本当にあの独特の匂いがしない!
爽やかな青みと苦みが美味しい!
長年、食べられなかったソラマメがこの日から私の好物となったのです。
その後に気が付いたのですが、収穫したての新鮮なソラマメは大丈夫でしたが、収穫後、数日経ったソラマメはやはり私の苦手な匂いが…。
食材の鮮度の重要性を改めて体で感じた経験でした。
そして、私の大好物と言えば春のアスパラガス!
シチリアのアスパラガスはヒョロヒョロに細く、一度畑の端っこに植えておくと、春と秋に毎年ニョキニョキ姿を現します。
このヒョロヒョロアスパラガス、フリッタータ(卵焼き)に入れると、味が濃くてほろ苦くて美味しい事!
春野菜の中でもアスパラガスは本当に旬が短く、市場にもいつもあるわけでもないので、見つけたら必ず買ってしまいます。
カルチョーフィはどうやって食べる?
さて、春野菜のもうひとつの代表格と言えばカルチョーフィ。
英語ではアーティチョーク、日本語では朝鮮アザミ。
イタリアではとってもポピュラーな野菜ですが、日本ではほとんど見かける事がありません。
カルチョーフィはクリスマスの時期から早生ものが市場に並びますが、本当の旬は春。
でも春野菜の中では比較的長い期間、市場に並ぶ野菜です。
巨大松ぼっくりのような不思議な形をしたこのカルチョーフィの正体はお花の蕾。
収穫せずに放置すると5月になって鮮やかな紫のお花が咲きます。
カルチョーフィは先端にはトゲがあって、周りは非常に硬く、最初に食べた人は相当勇気が要ったであろうと思わんばかりです。
料理教室の生徒さんとシチリアの市場を散策していると
「どうやって食べるのですか?」
と必ず聞かれます。
日本では「茹でる」が一般的なようですが、シチリアでは「蒸す」か「焼く」が一般的。
私の一番好きなのは、BBQをした後の炭に丸ごと入れて30分~1時間。
周りがコゲコゲになるまで焼くという食べ方ですが、これは日常的に作るのは難しいです。その次に好きなのが丸ごと蒸す、という方法。
カルチョーフィの中を軽く洗ったら、みじん切りにしたにんにく、イタリアンパセリ、塩、こしょうを、カルチョーフィのがくのトゲに気を付けながら手で開き、中に詰め込みます。
鍋に並べたら上からたっぷりのオリーブオイルと蒸すための水を適量入れて、フタをして蒸すこと30分。
ホックホクのカルチョーフィは1枚1枚はがして、下の柔らかい部分を歯でこそげるようにして食べます。
可食部がとても少ないカルチョーフィですが、蒸すことで柔らかくなる部分が多く、おそらくこの方法が一番無駄なくカルチョーフィを食べる方法だと思います。
カルチョーフィはシチリアの家庭では、前菜でもなく、付け合わせでもなく、食事の最後、フルーツを食べる前に食べます。
これはカルチョーフィが消化を促す作用があるからと言われています。
食で健康を保つための知恵が昔から現代に受け継がれているのは、世界中どこでも一緒です。
田舎道を散歩しながら野草狩り
シチリアでは冬から春にかけて、田舎道を散歩しながら野草狩りをすることができます。
ただし、野草狩りは必ず地元の人と一緒に行きます。
いくらシチリアでも全ての農家さんが無農薬で野菜を栽培している訳ではありません。
また冬の間にたくさんの雨が降り、そして暖かくなってくる春には、驚く勢いで雑草が成長するため、農業用地でない場所には農薬をまいて除草する人もいます。
それを知らずして野草を収穫し、その野草を食べたら…と思うととても恐ろしい。
野草は必ず地元の人が「ここなら大丈夫!」と太鼓判を押す場所で、食べられる野草を収穫します。
野草は全く雨が降らない夏が終わった秋から収穫が始まります。
12月~1月にかけてはクワレッドゥと呼ばれるからし菜のような野草、その後に青いきれいなお花を咲かせるボリジ。
そして春に収穫できるのはジーラと地元で呼ばれているチコリアのような野草。
いずれもちょっと苦みのあるクセのある味ですが、たっぷりの湯でクタクタになるまで茹で、美味しい塩とオリーブオイル、そしてレモンをギュッとしぼっていただきます。
シチリアでは1年を通してレモンを料理に使いますが、野草とレモンは旬が同じ季節なせいか本当に相性が良く、野草の苦みとレモンの爽やかな香りが食欲をそそります。
- ボリジは花が咲く前の小さい時に収穫。花が咲き始めるとトゲが大きくなって食べる事ができません。
- ジーラと呼ばれているチコリの一種。いつも野草を狩っている人達はもっさもさの雑草に埋もれている中、いとも簡単に見つけます。
春の旬は4月が終わると、あっという間に市場から姿を消してしまいます。
なので、4月は毎日春の旬を食べるのに大忙し。
食べることが大好きな私にとってはとっても楽しい季節のひとつです。
レシピ
今月の料理は「シチリア風春野菜の煮込み」をご紹介します。
グリーンピース、ソラマメ、新玉ねぎを使った春野菜の煮込みは、トラーパニの春の定番伝統家庭料理。
伝統的なレシピにはアーティチョークが入りますが、日本では入手が難しいので代わりにレモンを使ったさっぱりとした一皿に仕上げました。
レシピはこちら
ラ ターボラ シチリアーナ主宰。シチリア島トラーパニ在住。シチリア料理・菓子 スペシャリスト。イタリア料理・菓子の知識を生かし、大手企業で洋菓子の商品開発、カフェの店舗企画に従事。2004年、シチリア(イタリア)食文化を学ぶため、イタリアに渡り、現地にてシチリア郷土菓子や家庭料理を研究しながら、食に関するコーディネートや通訳などで活躍しています。
「ポッカレモン有機 シチリア産ストレート果汁」を使ったレシピを監修していただいています。